ブランコで空蹴り上げる神様が痛がるくらい つよく なんども
明日もまた生きていくためぜんまいの代わりにコーヒーカップをまわす
黄泉の国だけじゃなかった振り向いて見てはいけないルールに気づく
二十歳過ぎになっても迷子乱丁の本を手にして立ち尽くす夜
花壇には季節の花が咲き乱れ双葉も種の色も知らない
地下深く水は走った 過去という不純物質を払い落として
パレットにあるだけ絵の具をだしてみて何も描かないような休日
さかさまにした傘に海 大人には見えない魚を飼っていた頃
果てのない空におびえて満天の星も見上げることができない
どこまでも線路は続かないことをただ確かめるためだけの旅
制服のスカート揺れる 「恋」という字を簡単に書けないでいた
ひとつずつ音符数えて弾くピアノ 音は宝石みたいにひかる
注釈を付けだすまえにポストまで無事に手紙を守りぬかなきゃ
かぎっこの憂鬱 何度も確かめる小さな金属片のお守り
誰からとなくリコーダー吹きはじめ夕焼け空は町にあふれる
感覚が鋭くなってもう腕に時計をはめることもできない
カルピスの思い出話をして過ごす午後を何より 何より愛す
遠足は行かなくていいそのかわり前日のあの気持ちだけでも
息継ぎを忘れるくらいさみしくて プールの底は青く輝く
お迎えの使者がもうすぐ来るわけじゃないけど今日も月を見上げる
飲みながら語れるほどの恋もして二十歳の夏の夜は過ぎ行く
カーテンを閉めても朝は来るように目をそらしてもおんなじだった
泣くことは負けだと信じていたころの高い目線が懐かしくなる
文集に書いた「なりたい職業」を忘れて立派な大人になれた
2階建てバスに乗りたいすこしだけ古びた赤いおおきなバスに
精神的近視 未来はぼやけてて過去はやたらとはっきり見える
ピンチには代わってくれる人のいる野球の仕組みを考える夜
目に見えない電波なんかで繋がっていても不安は不安のままで
きっと君は天動説を信じてる 自分が中心だと思ってる
渦巻いた怒りはやがて海にでる赤道上で嵐に変わる
なにしても中途半端な僕たちの手で光ってるペーパーナイフ
もう二度と繰り返さないと誓うこと自体何度も繰り返してる
番付は横綱 流した涙だけ強くなれるというのであれば
新しい種を蒔こうよ 透き通る青いガラスのなるような種
前だけを見て走り出せ パイロットみたいに空だけ見てまっすぐに
約束はやぶっていいよ ゆびきりがただしたかっただけなんだから
声だけが年老いてゆくサザエさんにも平等に時間は過ぎる
ころばない自信があったからいつも全速力で走っていけた
コーヒーを豆から淹れるようになり二十歳の春ももうすぐ終わる
青色の絵の具を2本買ってきた 夏の始めの合図にしよう
泣くことが上手になった代償に涙の色がすこし濁った